<法人税の節税ポイント>


「IT関連設備への投資」と減税

 青色申告書を提出する中小企業が、取得価額の合計額が70万円以上である新品の「情報基盤強化設備等」を取得して国内での事業の用に供した場合には、「特別償却(=取得価額×70%×50%)」または「税額控除(=取得価額×70%×10%)」のいずれかを選択して適用できます。
 税額控除は、当期法人税額の20%相当額を限度としますが、当期の法人税額から控除し切れない金額は、翌1年間繰り越して、翌期の法人税額から控除できます
当制度の対象となる資産とは、情報セキュリティーを確保し、産業競争力の向上に資する次のような設備等です。
(※)印の付いている設備については、ISO(国際標準化機構)およびIEC(国際電気標準会議)の規格15408に基づき評価および認証されたものに限ります。

(1)基本システム
 @ サーバー用のOS(オペレーションシステム)(※)
 A サーバー用の電子計算機(@がインストールされたものに限る)
 B サーバー用の仮想化ソフトウエア(※)
(2)データベース管理ソフトウエア(様々なソフトウエアのデータを一括して管理することで、複数ソフトウエアの統一的運用を可能とするソフトウエア)
 @ データベース管理ソフトウエア(※)
 A@および@のデータベース管理ソフトウエアの機能を利用するアプリケーションソフトウエア(財務管理、顧客管理、人事管理などの特定の機能・業務に特化したソフトウエア)
(3)連携ソフトウエア(※)
(4)不正アクセス防御ソフトウエアまたは不正アクセス防御装置(※)
 (ファイアウォール、侵入探知システム、侵入検知システムで、上記(1)〜(3)のいずれかと同時に設置されるものに限ります)
 対象となる設備等については、独立行政法人情報処理推進機構のウェブサイト(http://www.ipa.go.jp/security/tax)に詳しく記載されています

人材教育訓練費と税額控除

 中小企業が「使用人」の職務に必要な技術や知識を習得させるための教育訓練費用を支出した場合には、「教育訓練費の総額」に対して一定割合による税額控除を受けることができます。   ただし、労働費用(給与、法定福利費、教育訓練費)に対する教育訓練費の割合が、中小企業のほぼ平均値とされる0.15%以上の場合にのみ、一定の控除率による税額控除が認められ、教育訓練費割合が高いほど、税額控除率が大きくなります。

 具体的には、教育訓練費割合が0.25%以上の場合は「教育訓練費用×12%相当額」、教育訓練費割合が0.15%以上0.25%未満の場合には「教育訓練費用×{8%+(教育訓練費割合−0.15%)×40}相当額」の税額控除が認められます。
税額控除の対象となる教育訓練費とは、外部の研修会社への委託費や研修参加費などをいいます。
 例えば、従業員の教育訓練上必要である講座の受講費用、外部研修への参加費用、資格・検定受検料、社外講師・指導員に支払う講師料・指導料、研修用の教材・プログラム等の購入料などです。 また、当制度の対象となる使用人とは、正社員、契約社員、パート労働者、アルバイトなど自社と雇用関係にある者をいいますので、役員、使用人兼務役員および指揮命令権のない請負労働者に対する教育訓練費は除かれます。

なお、税額控除の適用を受けるためには、別表六(十四)に必要事項を記載して申告するとともに、次に掲げる事項などを記載した書類を「添付」する必要があります。
 @教育訓練等の実施年月日または実施期間
 A教育訓練等の内容
 B教育訓練等に参加した使用人の氏名
 C費用の支出年月日、内容、金額、相手先の氏名および住所

「試験研究費」に関する税額控除

 企業が行う研究開発活動を税制面から支援する制度として、「試験研究費の税額控除」という優遇措置があります。
 当制度では、@試験研究費の総額に対する税額控除に加えて、A(イ)試験研究費の増加額、または、(ロ)平均売上金額の10%を超過する高水準部分の試験研究費に対する税額控除との選択適用が認められます。
試験研究費とは、損金に算入される「製品の製造」または「技術の改良、考案若しくは発明」にかかる試験研究のために要する原材料費、経費、専任研究員の給与等の費用をいいます。基礎研究、応用研究、工業化研究等の区分に関係なく、すべての試験研究費用が対象になり、研究部門の有無は問いません。新製品の開発研究に限らず、通常の製品の改良のための試験研究も含まれます。

 中小企業者に対する試験研究費の総額に対する税額控除では、当期法人税額の30%を限度として、試験研究費の12%相当額(大企業は試験研究費割合に応じて、8〜10%)の税額控除が認められます。
 試験研究費の総額に対する税額控除額は、当期の法人税額の30%を限度としますが、控除しきれない金額については、翌期の試験研究費が当期の試験研究費を超える場合に限り、最長3年間繰り越して各期の法人税額から控除できます。 この基本的な制度に加え、当期法人税額の10%を限度として、@試験研究費の増加額の5%相当額、または、A高水準部分の試験研究費に対して一定額の税額控除を受けることができます。 試験研究費の増加額とは、当期の試験研究費が、「比較試験研究費」(当期前3年間の平均試験研究費の額)を超える部分の金額をいいます。
 ただし増加部分の税額控除を受けるためには、当期の試験研究費が「基準試験研究費」(前2年間の試験研究費のいずれか多い方)を超えている必要があります。

「中小企業投資促進税制」による減税

 青色申告書を提出する中小企業が、表に掲げる一定の新品資産を取得して国内での指定事業に供用する場合には、
「特別償却(=取得価額×30%)」または「税額控除(=取得価額×7%)」のいずれかを選択して適用できます。税額控除を受けられるのは、資本金3,000万円以下の特定中小企業者のみに限られています。
 この制度では、対象資産の区分ごとに、次に掲げる取得価額要件を満たす必要があります。このうち車両運搬具と船舶については取得価額の要件はありません。

@ 機械及び装置 ・・・ 1台または1基160万円以上
A 電子計算機・デジタル複合機・・・各々で年合計120万円以上
B ソフトウエア ・・・ 年合計で70万円以上
C 車両運搬具(貨物運送用で車両総重量3.5トン以上のもの)
D 内航海運業用の船舶(取得価額の75%が対象)
(注1)中小企業者・・・資本金1億円以下の法人(大会社の子会社等を除く)
(注2)特定中小企業者・・・中小企業者のうち資本金3,000万円以下の法人

 特別償却の適用を受ける場合は、普通減価償却費の計上に加えて、初年度に「取得価額×30%相当額」の特別償却費が損金算入されます。  特別償却では、初年度の減価償却費の損金算入額が大きい反面、2年目以降の減価償却費は少なくなります。資産の購入日から処分・売却日までの通期で考えれば、特別償却の適用を受ける場合も、普通減価償却費のみを計上する場合も損金算入される減価償却費の累計額は同じです。  特別償却のメリットとは、購入した初年度に多くの減価償却費を計上することでコストの先取りをし、資産購入に費やした投下資本を早めに費用化できるという点です。
 一方、税額控除を選択する場合には、減価償却費が通常どおり損金算入されるとともに、「取得価額×7%相当額」を法人税額から控除できます。税額控除とは課税の減免であり、税額控除による節税効果はその後取り戻されることがありません。  税額控除は、当期の法人税額の20%相当額を限度としますが、当期法人税額から控除しきれない金額(税額控除限度超過額)は、翌1年間の繰り越しが認められ、翌期の法人税額から控除できます。

「在庫」の評価方法に関する節税策

 法人税法における在庫の評価方法には、取得原価で評価する「原価法」と期末時点での時価(正味売却価額)と取得原価とのいずれか低い方で評価する「低価法」があり、事業の種類ごと、かつ資産の区分ごとに自由に選択できます。
評価方法を選択しない場合は「最終仕入原価法(期末に最も近い時点の仕入原価)による原価法」にて評価します。

 期末時価である「正味売却価額」とは、その事業年度終了の時においてその棚卸資産を売却するものとした場合に通常付される価額(棚卸資産の期末時価)をいいます。 通常、その棚卸資産を商品または製品として売却するものとした場合の売却可能価額から、見積追加製造原価(未完成品に限る)および見積販売直接経費を差し引いて計算します。
 なお、原材料等のように未加工品である棚卸資産の期末時価は、通常、その再調達原価と一致するものと考えられるため、このような棚卸資産については、「再調達原価」により算出した金額を期末時価として差し支えないとされています。

期末時価が低下している在庫を取得原価のまま評価すると売上総利益が膨らみ、実態のない見せかけの利益に無駄な税金を支払う原因となります。期末在庫を時価評価する低価法を選択することで、保守的で、かつ、節税を意識した税務会計処理を心掛けたいものです。
ただし税務上は、在庫の評価方法を変更する場合には、変更しようとする事業年度開始の日の前日(前期末)までに、所轄税務署に変更承認申請書を提出して承認を得る必要があります。
 たとえば、3月決算法人では平成22年3月31日までに変更承認申請書を提出することで、平成23年3月期より新しい評価方法を適用できます。

「上場有価証券」の評価損を計上する

上場有価証券等(企業支配株式を除く)の価額が著しく低下した場合には、「損金経理」により帳簿価額を時価まで減額することにより、評価損の計上が認められます。損金経理とは「確定した決算において費用または損失として経理すること」を意味し、法人が意思表示をもって損益計算書において評価損を計上することが条件です。

 上場有価証券等の価額が著しく低下した場合とは、@期末時価が帳簿価額のおおむね50%相当額を下回り、かつ、A近い将来その価額の回復が見込まれないこと、をいいます。例えば、帳簿価額が2000である上場有価証券等の期末時価が900となった場合は、期末時価が帳簿価額の50%(1000)相当額を下回っていることになります。 上場有価証券等の価額が回復するかどうかについて、法人税法には形式的な判断基準の明記はなく、法人が株価の回復可能性に関する検証を行う必要があります。 ただ、法人の側から、過去の市場価格の推移や市場環境の動向、発行法人の業況等を総合的に勘案し、近い将来株価が回復しないことについての根拠が提示される場合には、税務上その基準は尊重されます。

 例えば、投資先の会社が債務超過である場合、2期連続で損失を計上しており翌期も赤字が見込まれる場合、株価が2年間にわたり著しく下落した状態にある場合、株価純資産倍率が市場平均の3分の1以下になった場合は評価損を計上するなど、一定の合理的な判断基準を設定しておきます。
なお株価の回復見込みは、事業年度末において、過去の市場価格の推移や発行法人の業況、財政状態等を勘案して行います。
 もしも、回復の見込みがないと合理的に判断して評価損を計上した後に、株価が急騰しても、過去にさかのぼって評価損計上額を訂正する必要はありません。
Copyright ©2010 JUNKO KOGE, All Rights Reserved. Powered by Team KF.